夕飯が済んでお風呂に入った
ゆっくり湯船につかるとほっとする

家のお風呂は何週間ぶりだろう
今の病院に移ってから2度目の外泊だから１か月ぶりかしら

鏡に映る自分を見る
長くしていた髪を切った日は涙が出た
治療に邪魔だったし
入院生活を楽に過ごすためには仕方なかった

長かった時は
まっすぐで綺麗な黒髪だと人によく誉められた

ブラッシングするのが好きだったけれど
今は短いボブだ
艶もなくなっていた


テレビを見ると
ちょうど彼が画面で笑っているところだった

優しい顔したり怒って見せたり表情がいろいろだ
いつも楽しそうにしているから
見てる私たちも楽しくなる

番組が終ったので自分の部屋に戻った

10時を過ぎている

智くんにメールしても良いかしら？

（自分の部屋に戻ってきました。まだ大丈夫でしたか？）

しばらく待ったが返信は無かった

またスマホを抱えて眠ろうとしたときメロディーが鳴った

（ごめんね･･･風呂に入ってた。もう寝ちゃうの？具合大丈夫？）

（大丈夫です。智くんは大丈夫？）

（俺は明日早くないから平気だけど葵ちゃんは？）

（少しだけなら･･･）

（明日　病院に戻るの？）

（ええ･･･3時までには戻らなくちゃいけないの）

（病院って携帯とかネット禁止じゃないの？）

（個室だし今は許可が下りる場合もあるのよ･･･精神衛生の為に）

（そうなんだ･･･全部だめなのかと思ってた）

（iPadも使ってるから暇つぶしには良いの。ネットでいろんなもの見れるし）

（そうなんだ･･･ネットで何見るの？）

（あなたのダンスの動画やファンが書いたブログとか･･･見たことある？
あなたのこと書いている人ってすごくたくさんいるのよ）

（見たことあるよ･･･なんか細かいところまで見てくれてるんだなって思うよ）

（そうでしょう？全部記録されてるって感じよね）

（うん･･･葵ちゃんは？俺の事書いてくれてないの？）

（そうね～教えたら読まれちゃうでしょう？恥ずかしいわ）

（書いてるんだ？見たいな　教えてよ）

（だめよ･･･教えない･･･病気の事も書いてるから見られたくないの）

（そうなんだ･･･病気ってどこが悪いの？）

（それも内緒･･･もう寝なくちゃ･･･疲れると明日辛くなるから）

（そうだよね･･･じゃあまたメールするね）

（この前綺麗な空を撮ったから送ります。おやすみなさい）

茜色の四角い空の写真を添付して送った

（ありがとう･･･綺麗だよ　おやすみ）

幸せだった
彼のメールに元気をもらっていた





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