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妄想物語 智の恋 妖精 アンと涼子 終わり
また前と同じような日々に戻った
俺と会わない日は、好きなように時間を使って、書いたり散歩したりアンと遊んだりしているみたいだ

短い同棲期間にわかったことは、いろいろある

顔も洗わず何も食べずに書いているときは順調な時で、ソファーでのんびりしている時間が長い時は、進んでいない時だとか、思っていたより料理のリパートリーがあるとか、あのベンチに毎日のように座りに行く事とか
一人の時間の過ごし方も発見だった

そして、涼子は俺のために何かしなくちゃと思ってくれていたことも嬉しかった
でも無理しなくて良いんだよ
作家という身を削るような仕事をしているんだから
自分の時間を生きていて欲しい

それでも前より俺の部屋に泊まる事が多くなった
締め切りに余裕があるときは、ずっと一緒にいた

一緒にご飯を作って飲んで、一緒に風呂に入って同じベッドで朝までいて、早く起きた方が朝御飯を作るんだ
向かい合って食べることの幸せや、お互いの全てを知ろうとしなくても大丈夫だということや、将来の約束をしなくても不安にならないことが発見だった

これからもきっと、こんな毎日が続くのだろう

俺は、今日もランニングだ
公園を7周するつもりでいる

俺と涼子のベンチには、カップルが座っていた
女の子の笑顔が可愛かった
こんな風に笑ってくれることが、男にとって幸せなんだよな

何気ないことを話して、笑いあって、続きを話してまた笑うんだ

涼子とずっと一緒にいられたら良いな

あ…思い出した
いつだったか、雑誌のインタビューで、俺が驚くことを話したって言ってたけど、あれは何だったんだろう
まだその雑誌を見ていないな

発売されているんだろうか
涼子に聞いてみよう

シリーズ化している探偵が主役の話も結構面白い
涼子の本を読み始めてから本が好きになった

涼子の本は全部読んでいるし、涼子に薦められた本も読んでいる
いつも何か持って歩くようになった

今は、涼子が憧れているという女性作家の本を全部読むつもりだ

本を読むことの大切さを教えてもらった俺は、涼子にどんな影響を与えているんだろう
俺なんて駄目だな
もっとちゃんとした大人の男になろう

ずっとそばにいたいと思ってもらえるように

7周目はきつかった
考え事をしながら走るとペースを忘れて早くなってしまうんだ

このまま涼子のマンションに行きたくなったが、やめよう
しばらく連絡がないから、きっと書いているのだろう

俺達のベンチが空いた
そこに座って緑の葉から差し込む光を見た
水面には、いつものようにカモが泳いでいる

こうやって、ぼんやりするのも良いもんだ
涼子何してる?

そう思って、落ちている枝で地面にRYOKOと書いたら風が吹いて、涼子のシャンプーの匂いがした


終わり


読んで頂いて、ありがとうございました




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妄想物語 智の恋 妖精 アンと涼子 23
自由に過ごして構わないと言っているけれど、きっと半分位は我慢していたんじゃないかと思う

俺が家にいるとき、涼子は書かなくなった
部屋にこもらなくなったんだ
でも何か考えているなと感じるときもあった

一週間過ぎたとき、俺から話をした

「涼子…アンは涼子の部屋に帰りたいんじゃないかな」

「なんで?」

「なんとなくアンと遊んでいるとき元気が無いように見えるんだ」

「そうかな」

「涼子は、どうなの?自分の家の方が書けるでしょう?」

「そうかな
変わらない気もするけど…
智さんが帰った方が良いって言うならそうする」

「いや…俺から一緒に住みたいって言ったんだよ
そりゃあ毎日涼子の顔見たいさ」

「私も…
でもね…智さんの身の回りの事をしてあげたいのに、出来てないなって思うよ」

「俺は自分の事は自分でするから、そんなこと構わないんだけどね」

「うん…どうしよう」

「どうしようか」

「せっかく部屋を用意してくれたのに…」

「時々、泊まりに来てさ…書きたくなったら今の部屋を使うとか?俺がいない時間、前なら帰ってたけど、帰らなくても書ける場所があったら良いんじゃない?」

「うん…そうだね
そうしようかな」

「うん
俺が言い出した事だけど、今は同棲は、やめておこうか」

「わかった」

涼子の顔が明るくなって、頬がピンクに染まった
「そうする」と言って抱きついてきた

「智さんって本当に素敵。大好き」

「また可愛いこと言って~くすぐっちゃうぞ」

「ふふふ…」

「ほれほれ」

「あ…ん…やめて」

俺は調子に乗って涼子を笑わせて、いろんなところを触って、そのままソファーで抱いた




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妄想物語 智の恋 妖精 アンと涼子 22
「悪いけど、ちょっと部屋にいる」

「良いよ
好きなようにしていて良いんだよ」

「うん」

また部屋にこもって書き始めたようだ
4時間たつけど出てこない

こんな風に生活していたんだな
この隙間に俺と会う時間を作っていたのか
そう思うと、ずっと一緒に住むのは無理をさせるような気がした

でもこれを理由にしたら可哀想だ
涼子は上手くできなかったと自分を責めてしまうかもしれない
俺は自分の気持ちを押し付けたようで、反省した

涼子が買い物してきた食材を見た
鯖の切り身と人参とごぼうか

鯖は味噌煮にして、あとはきんぴらかな
味噌汁は、キャベツと豆腐で良いか

出来上がった頃、涼子が出てきた

「ごめんなさい
私が作るって言ったのに」

「良いんだよ
きっとこれを作ろうとしたんだろうって思ったからさ」

「そうそう
でもきっと智さんの方が美味しくできるよ」

「そうかな
食べようか?」

「うん」

二人用で、ダイニングテーブルに運んだ

「ビール飲む?」

「一口だけ欲しい」

「良いよ」

「いつもこんな感じなの
書きたくなると何も食べずに書いてる」

「そうみたいだね」

「それがいつ始まるか自分でもわかんない」

「うん
今まで俺と会うとき、無理させてなかった?」

「え?そんなことないよ
会えるのが楽しみでがんばれるもん」

「そっか」

「美味しいわ
さすがね」

「良かった」

「智さん、明日は?」

「明日は…一番忙しい曜日」

「そうだったわね
朝早いんだよね?」

「うん
でも涼子は起きなくて良いよ
鍵かけて行くから安心していて」

「うん
なんか私…何もしてあげられない」

「何もしなくて良いのに
毎日顔を見れるだけで良いんだ」

「そうなのかな」

「そうだよ…でもたまに俺のベッドで寝てくれる?」

「うん…今日?」

「おっ良いね」

「ふふ…」

顔を赤くしちゃって可愛いな

その夜は、眠りにつくまで一緒にいられた
涼子は、いつもの様に、小さい声をあげたり、俺を熱い目でじっと見つめたりしていた

俺はそのたび、いとおしくなって抱き締めた




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妄想物語 智の恋 妖精 アンと涼子 21
「ただいま~」

「おかえり」

「アン…ご飯食べたかな?」

「おやつはあげたけど」

「ご飯も食べたわね
空になってる」

「そっか
自動で出てくるんだったね」

「うん」

「何買ってきたの?俺作るよ」

「私が作るよ
智さんの為に何もできてないもん」

買って来た物を冷蔵庫にしまってから炭酸水を持ってソファーに座った

「お疲れさん」

「智さんは?仕事だったんでしょう?」

「うん」

「お疲れ様」

「向こうで書いてたの?」

「うん
でもアンが心配だった」

「そうだね…どう?順調?」

「うん…って言いたいところだけど…」

「進まなかった?」

「そうだね…止まっちゃってる」

「そうか~」

「大丈夫大丈夫
なんとかなるわ」

「そうだよね」

「うん…」

そう言ったあと、いつものぼんやりに入った

こういうときは黙っていてあげるんだ
俺は、釣りの雑誌を手にした

ページをめくっていると涼子がそれを見ていた

「ん?見る?」

「うん…すごいね
豪華だね…クルーザー?」

「うん」

「へえ~こんな風になってるんだ
ベッドもある
トイレも?」

「あるよ」

「海で、もし大波にあったらどうなるの?」

「救命胴衣を付けて…自分の位置を知らせるライトを付けたりする
無線でSOSして救助を待つんだ」

「うん」

「興味あるんだ?」

「興味ある
海上での事件…」

「良いね
俺、参考になること話せるかも」

「うん」

涼子の目は、とたんに輝き始めた
本を書くことが楽しいんだな
夕飯は、やっぱり俺が作ることになる気がした




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妄想物語 智の恋 妖精 アンと涼子 20
次の日、昼過ぎに仕事から戻ると、涼子はいなかった
何時頃帰るんだろう
そういや何も聞いてなかったな

アンが俺の足にすり寄ってきた
「おっアン…お腹空いてるの?
これ食べるか?」おやつをトレイに入れると、すぐに食べた

俺は、冷蔵庫を開けて昼めしを何にするか考えた

う~ん
何もないな
ラーメンでも食べに行くか

キャップを被って外に出た
近所の行き付けの中華屋に入ると、俺の指定席にしてくれている奥のカウンターに座れた

大きな柱があるから目立たない席だ

「いつもの?」と店長に聞かれ、頷く

「この時間珍しいね」

「うん
食べ物何もなくなっちゃって」

「そうなんだ」

「うん
夕めしの材料買って帰んなくちゃ」

「へえ~スターが何やってんの」

「スターじゃねえし」



お待たせしました
バイトしている店長の娘が運んできた

「ありがとう
バイト楽しい?」

「親と一緒じゃねえ
うるさくて嫌になるけど、時給良いから」

「そうなんだ
がんばって」

「うん」

ラーメンを食べているとスマホのバイブが震えた

涼子からのラインだ
慌ててスマホを持ったから割りばしを落とした

何やってんだ

(担当さんと会えたけど、もう少しここで書いてから戻るね
夕飯の買い物して行くから)

(わかった)

夕飯何かな
涼子が、買い物をしてくれてまた俺んちに帰って来るなんて嬉しくなる

ビールも飲みたかったけれど我慢した
なんでかわからないけど、今日は我慢した

夕方、少し暗くなってから涼子が戻ってきた



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プロフィール

satoco

Author:satoco
嵐のファンになり13年目ですが、
活動休止を機にファンクラブから離れました
お茶の間ファンではなく、一般人です

大野智さんが活動を始めるまでは、一般人として感じた事を書くことにします

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